お直しの会社に入って早速「これをしといて」というような感じでジャケットの袖丈つめを渡されて、まぁこちらとしても作っていた方の経験と、理屈は分かっているつもりですし、で、早速とりかかったわけですが、初日は一日かけてその仕事が2着分しか出来ませんでした。
大変ショックでした、はっきり言って眼中にも無かった、ぶっちゃけて言えば格下に見ていたような仕事なのに…。日当に換算したらいくら?がっかりするほど仕事ができませんでした。
自分で言うのも何ですが手先は器用な方だと思います、何度かやれば大体マスターしちゃう方だったので考えてみれば初めてガツンと頭をハンマーでなぐられた様な体験でした。
周りの先輩職人さんに聞けばある程度教えてくれます、でも職人それぞれのやり方(その人にとってのやり易いやり方)もあって「これ」という一つの答えは無いのだと知りました。
ひとまずスーツ作りは横に置いて、まずこっちを一人前の仕事ができるようにしないと負けた気がする、そんな感じでスピードを上げるよう日々仕事をしていました。気がつくとバイトのつもりが社員になったりしてましたが。
自分の親ほど歳の離れた職人さんに教えてもらって、ベテランの仕事を盗み見て、真似をする。
なるほどなぁ、こんなやり方もあるんだなぁと思うたび「仕立て」と「寸法直し」は考え方が違うなぁと、似て非なるものだと実感しました。
素材も形も様々、詰める箇所も寸法も違う、同じ事が2回と繰り返されない仕事は飽きませんでした。
袖丈を袖口の方から詰めたり出したりというのがある程度出来るようになったら、今度は身幅を詰めたり出したりの仕事も時々させてもらえるようになりました。
身幅詰めもお直しならでは手数を減らす方法で教えてもらいました。
今振り返るとあまり良いと思える仕上がりでは無かった気がしますが、当時と今では求められるクオリティが高くなったのだと思います。
そして着丈詰めをこなすようになった辺りで一区切りです。
ここから先は袖を外して付け直せる技術が必要な、肩幅詰めや肩から(袖山から)袖丈を詰める仕事になるので元テーラーの職人とかのいわゆる熟練職人の領域でした。
ちなみに入社から数年後、袖丈を肩から詰める作業手順を教えてもらった際、当然最初は言われた通りに進めるのですがどうもいまいちしっくりこない、元の雰囲気が消えてしまうような…。
作業の度少しずつ改良を加えて試行錯誤して、結果自分なりの方法論を確立しました。
誰でも知っているようなハイブランド商品のお直しを今現在もさせて頂いてますが(値札を見るとびびってしまうので見ないようにしてます)おかげでかなり自信を持ってやっています。
あれ?結局まだ本題に入ってないような…
↓この画像は袖丈詰めで本開きの際、詰める寸法が多いとアキが短くなって足りなくなるので切った分の生地をL字型に継ぎ足した所です。