手穴かがりの職人1
リフォームの会社に入ったきっかけがメーカー時代にお手本にしていた「袖の手穴かがり」だったと話しました。
工場で仕事していた頃、みんなが手本として真似ていたのがその会社に所属する職人の仕事でした。
ここだけの話し、機械の穴ミシンで通常より細い糸を使い、ワンタッチのオートメーションでミシンと穴を開け、あとは手縫いの穴糸を使ってミシン跡をなぞるように手でかがれば大きさも形も均一に揃います。
穴ミシンなど導入していない(かなり高価なので)リフォーム屋では一つずつホールの大きさにほつれどめのミシンをかけて、ノミと鳩目を使い穴を開ける、一つ一つ手作業なので手間はかかりますが本来はこのような手順です。
厳密に言えばそれぞれ若干表情は変わりますが、それでもその手穴のお手本を皆が食い入るように見て参考にしていました。
工場を辞めてさてどうしよう?と考えた時頭に浮かんだのがその会社でした。
やはり針と糸を使う仕事でないと意味が無いと思ったからですが。
もちろんお直しには全く興味はありません。
小さい会社でしたのですぐその職人はわかりました。
それぞれに担当する仕事内容があって、各々のペースでそれぞれ仕事をする。
独立した職人の集まりの様な所でした。
初めは袖の寸法直しからの仕事だったのでなにかのきっかけで話しかけたのか、話しかけられたのか、「前の職場ではいつもこの手穴をお手本にしていましたよ」と言った事がきっかけか、色々と教えていただきました。
入社してまだ数日のその頃は特に思う事は無かったんですが、あとから思えば嬉しかったんだろうなと思います。
仕事内容に署名している訳でも無いのに「あなたの仕事ですよね」とこちらが指摘した事が。
「作品」と言い換えてもいいかもしれない仕上がりに、職人として誇りを持っていたんだろうと思います。