
- 2017年2月28日
切羽と本開き2
切羽と書いてセッパと読む、「切羽詰まる」とかの言葉とは何も関係ないようです。 なんでこの飾りミシンステッチの事を切羽というのか、誰かご存知ありませんか? ところでこの切羽、特殊ミシンになります。 それだけしかできないミシン。自分の所にあるのは中古の、しかも古いモデルのミシンです。 「reece」(リース)という会社のミシンです、レンタルしているわけじゃなくてそんな名前なのでややこしい。 自分の知る範囲のセッパミシンはジューキとリースしか知りません、ジューキは言わずもがな有名メーカーですがこの切羽、ホール関係ではリースの方が好みです。 おそらくいくつかの種類のあるホール関係のミシンは機械ごとに特徴のある運針、かがりかたをするようでして、中でもビンテージに入りそうな昔のリースのボタンホールマシンは現在主流のコンピュータ制御のミシンとは違い、カスタマイズができる余地があってかなり細幅で綺麗なボタンホールが作れるようです(外部のホール屋さんの話し) ただその度下メスだか駒の交換らしいことをしなくてはいけないようで、煩わしく思えます。 その点コンピュータ制

- 2017年2月26日
切羽と本開き1
テーラードジャケットの袖に、たまにこういった「メス無しのボタンホール」が施されていることがあります。 こういうのはインポートの洋服に比較的多いです、メリットは生地に切り込みを入れればそのまま本開きになるというところ。 ただ袖丈を詰めたり出したりする場合は、ほどいた際の跡形が残り易いため難儀するところです。 詰める場合は肩から詰める方がいいかもしれません。 もともとインポートは袖は長めなので、出す事はあまりないかもしれません。 ちなみにこれも「環縫い」みたいなしくみなので、きっかけの所を外せばツルツルツルとほどけてくれます。根元の閂部分を解くのはとても厄介なんですが。
- 2017年2月21日
取れ易いボタン
時々新品の商品でも「釦を補強」とか「付け直し」とかあります。 最初から(製造の段階で)なんとかすればいいのに、って思ってしまいますが、もちろんそんな事は口にも顔にも出さず粛々と作業をするだけです。 なぜそんな事になるのか?という理由は機械で付けられたか、手縫いで付けられたかの違いによると思います。 機械縫いの構造は「環縫い」 チェーンステッチで御馴染みのアレです、一本の糸のループの繰り返し。 スラックスの裾上げにも使われる表に縫い目の無い仕上げもソレです。 糸が一本の為どこかループのひっかかりが外れるとツルツルツルと外れます。 ほどくときは気持ちいいんですけどね。 釦付けというのは手縫いで一個一個つけると一つあたり意外と時間が取られます、機械は当然早くて一瞬。一着あたり10個付けるとして1000着生産するとなると機械に勝るものはないですね。 一方手縫いは布を一針一針すくっていくので糸を引っ張ったらほどけるということはありません。 手縫いの返し縫い、星止めはほどくのも苦労するくらいです。 いつかここで釦の付け方を写真付きで説明してみようかなと思いま
- 2017年2月21日
既製品とオーダーメイド
これだけモノも情報もあふれていてしかも洋服も使い捨て感覚になるほど安く買える今の時代、いったい「直し」に出来る事は何だろうかとよく考えてました。 ひとつ考えついたのは「既製品とオーダーメイドの間を埋める事」 例えば男性を無作為に10人集めたら10通りの身長体重体型の人が集まり、女性であればバストもあるのでさらに様々になるかと思います。 ところが既製品でのサイズは最大公約数的に数サイズ(S、M、L、XLとか)のみで構成されています、量産を考えると当たり前の事ですが、細かくサイズ分けするほど手間も売れ残りも発生し非効率なのは明らか。 体に合った服に出会えるのは逆に言うと恵まれた体型なのかもしれません、(誰にでも合うようで誰にも合わないのが量産既製服だと思っています)もしくはたまたまパターンが合ったのか。 ほとんどの人が服に体を合わせることになるのではないでしょうか。 しかし既製品にもいいところがあって、いい意味で体型をごまかせるというか、少々イレギュラーな体型でも平均にもっていってくれるという面もあるかと思います。 体に合わせすぎるのも善し悪しで、服

- 2017年2月17日
洋服のオイニー
ここ数年ドカジュアルに振れてしまっている自分の冬アウターの2番手。”workers”のクルーザージャケット。 filsonの古着でありそうな、森の中が似合いそうな王道のアメカジ的ウェア。 比較的暖かい今朝のハンガーラックにかけた自分の服の辺りからなんとなくなんとなくオイニーがする、気がする。 加齢臭かミドル臭というやつ。おそらくそれ。 そういえばこれは洗ったりしたことないな、クリーニングに出した事もない、というかそもそもあまりクリーニングは利用しない方で、ニットもアウターなどもできるだけ自分で水洗いをするようにしています、そもそもこんなかたくて目の詰まった厚いウールメルトンなんか水が通りそうもない。 ウールの特徴として水は弾くけど水分は通気するという性質があります、二つの相反する性質を一つで持っているというのは天然素材の優れたところ(もちろんそのような性質をもつ機能素材はありますが)。クリーニングなど繰り返して油分が抜けると綿のように水を吸収しちゃうのでしみにもなりやすいです。 背広などは生地に直接地肌が当たらないようにカラーやカフスのついたシャ

- 2017年2月11日
手穴かがりの職人2
アパレルとか洋服に関係した仕事をしていても、普通の人は”機械のボタンホール”か”手かがり”によるボタンホールか分からない場合があるようです。 素人のハンドホールならすぐ分かるかも知れませんが、プロの仕事はやはり綺麗なので。 まず前提としてその「見る目」を持っている事、そのうえでも別格だと判断された事。 それが大変誇らしかったんだろうなと、今更ながら思います。 時々ひまのあるときは横でやり方を見させてもらいました。 やっぱり手順はほぼ同じ、同じようにやっても仕上がりは全然違う。 時々コツも教えてくれるのですが、やはり「手加減」「手の感覚」次第というところなのでしょう、道のりはまだまだ遠い。 一つや二つならまぁ出来るんですが、ジャケットの袖は大抵片方に4つ、左右合わせて計8つかがらなくてはなりません、それを同じ様に均一に揃えるのがベテランの腕です。 「手穴は少々アバウトな感じがあるからこそ手の温もりみたいなのがある」 否定はしません、ただ本当にヘタクソでそれを誤摩化すもっともらしい言い訳のようにも聞こえます。 夏物の薄い生地でもツイードのような厚い生
- 2017年2月9日
手穴かがりの職人1
リフォームの会社に入ったきっかけがメーカー時代にお手本にしていた「袖の手穴かがり」だったと話しました。 工場で仕事していた頃、みんなが手本として真似ていたのがその会社に所属する職人の仕事でした。 ここだけの話し、機械の穴ミシンで通常より細い糸を使い、ワンタッチのオートメーションでミシンと穴を開け、あとは手縫いの穴糸を使ってミシン跡をなぞるように手でかがれば大きさも形も均一に揃います。 穴ミシンなど導入していない(かなり高価なので)リフォーム屋では一つずつホールの大きさにほつれどめのミシンをかけて、ノミと鳩目を使い穴を開ける、一つ一つ手作業なので手間はかかりますが本来はこのような手順です。 厳密に言えばそれぞれ若干表情は変わりますが、それでもその手穴のお手本を皆が食い入るように見て参考にしていました。 工場を辞めてさてどうしよう?と考えた時頭に浮かんだのがその会社でした。 やはり針と糸を使う仕事でないと意味が無いと思ったからですが。 もちろんお直しには全く興味はありません。 小さい会社でしたのですぐその職人はわかりました。 それぞれに担当する仕事内

- 2017年2月4日
ジャケット着丈つめ
以前書いた「人気男性タレントF氏お直しする衝撃の事実発覚!」 未だに僕の所にはアポイントメントはありません。まだかな。 私物のジャケットの着丈詰めをしたので少し詳細をあげてみようかと思います。 昔縫製工場で働いていた頃に自分で作ったジャケットです、たしかパターンは流用して作ったような。既製品らしい縫製仕様になってます。 まずフロントカットをもう少し丸みの出たカットにしようと思います、いくつか型をつくってあるのでイメージに近いものを合わせてみます。 後ろとサイドはそのままに、前だけ1.5くらい上げて、そこからゲージをあててカットを書き直します。これが出来上がりのライン。 パッチポケットの大きさと付け位置の移動もするため一旦全部外します。 外すと結構ほこりやらごみが内側に溜まってました。 底を1センチ浅く縫い直します。 で、ひっくり返して形を整えて。 付け位置をホールと同じくらいの高さに。裾から4.5センチくらい離れました。 チョークで直接印をつけてそれを頼りにポケットの口から中縫いします、押さえは細いやつにとりかえて。これが一発でうまく縫えると充実
- 2017年2月3日
拝啓 福山雅治殿
一年以上は前でしょうか、車の中でラジオを流していた時、たまたま福山雅治さんの番組がかかっていて、その中で洋服の話になった時「ボクもたいていお直ししますよ、少し(の寸法)でも」という衝撃的な言葉が耳に飛び込んでまいりました。 あの!福山雅治が!お直しを!するなんて! 「少しでもやっぱり違いますよ」だなんて、もっと大きな声で言って下さいよ!いろんな所で! 運転しながら独り興奮して魂の叫びをあげてしまいました。 衣装関係の方に頼むのでしょうかねぇ。 ほんとかよ?という方は「福山雅治 洋服 サイズ」でググってみて下さい、番組の内容を書き起こしたようなファンの方のサイトがありました。 自分でも幻聴ではなかったのだと安心しました。 しかしコレを聞いて我々凡人はどうすればよいのでしょうか? ただでさえ男前の人がお直しするほど洋服のサイジングにも気を遣っている。 もはや越えられない壁どころの話ではない様な気もします。